4.四界と樹の多元性について
まずは、フラター・エイカドが、本来ならこちらの方から記述すべきであるとした(でも結局は逆の順序で解説した)<小アルカナ>の<樹>に対する照応の話から。
前節で触れた通り、各スート(組)の数札1(エース)〜10は、そのまま1〜10の各セフィラーに当て嵌めることができる。即ち、
<ケテル>に<4枚のエース>
<コクマー>に<4枚の2>
<ビナー>に<4枚の3>
<ケセド>に<4枚の4>
<ゲブラー>に<4枚の5>
<ティファレト>に<4枚の6>
<ネツァク>に<4枚の7>
<ホド>に<4枚の8>
<イェソド>に<4枚の9>
<マルクト>に<4枚の10>
となるが、『ここで我々は、カバリストが「四界」について述べていることを考察せねばならない』。-P75-
四界とは要するに<樹>で表すことのできる世界を便宜上4つに分けて扱いましょうというお約束で、具体的には、
(1) 互いに重なり合った4つの<平面(プレイン)>(15)を想定する
(2) 4輌編成の<樹>を想定する
(3) 1本の<樹>で表される<全体>を4分割する
という3つのやり方(+もうひとつ)が紹介されている。
(1)の方法は、『4つの類似する「木」があり、これは同じ位置を占めてはいるがそれぞれ異なる<平面(レヴェル)>を表している』『同じ空間を占めているが、その実質は異なる段階にあり、互いに浸透しあっている』と考えるもの。同時に同じ対象と向き合いながら、なぜか自分とはまったく違ったものを見ているらしい人がいた。なんて経験はおありだろうか? 説明しましょう。その人の意識は、あなたとのそれとは別の<平面(プレイン)>で活動してたんですよ。たぶん。また、このやり方で考えれば、「今ここが星幽界だ!」などという魔術的に酔狂でロマンチックなフレーズも別段驚くには及ばないことになる。
(2)は、『最初の「木」の<ケテル>がそのすぐ上の「木」の<マルクト>に照応する』即ち、<樹A>の<ケテル>と<樹B>の<マルクト>を重ねホッチキスでぱちんと留めた状態としてイメージできる。<樹B>の<ケテル>が<樹C>の<マルクト>と重なっていることは言うまでもない。
四界の説明図(16)としてもっとも一般的に目にするのは、(3)のやり方に則ったものである。エイカドも、四界についての詳細は基本的にこの流れの中で説明している。
もうひとつの方法とは、セフィロト中に<樹>を置き、各セフィラーを10に分割するという「鏡の中の鏡」或いは「箱の中の箱」のような入れ子構造を想定するもの。精緻な分析を可能たらしめる為、特殊な局面において極めて有効とされる。
四界のそれぞれは、発音すべきでないとされる<テトラグラマトン>を構成するヘブル語アルファベットの4文字(F○○Kではない)に対応しているとされ、4文字とは(ここでは左から)ヨッド/ヘー/ヴァーウ/へーを指す。
各<界>の名称/意味/ヘブル文字/四大/タローのスート/セフィラーの照応は次の通り。
◇アツィルト/原型/ヨッド/火/棒(WAND)/コクマー
◇ブリアー/創造/ヘー/水/聖杯(CUP)/ビナー
◇イェツィラー/形成/ヴァーウ/風/剣(SWORD)/ティファレト
◇アッシャー/物質/ヘー/地/星形(PENTACLE)/マルクト - P81-
四界の話に何で単独のセフィラーが出てくるか? エイカドによると、<ヨッド>が<コクマー>に、<ヘー>が<ビナー>に配当する理由は、『このふたつは万物の<<父母>>だから』だそう。<息子>と呼ばれ、<ケセド>以下6つのセフィロトを支配する<ヴァーウ>は、<ティファレト>に割り当てられ、樹の『道徳的或いは知的な部分を支配すると言い換えることも可能』だから。最後の<へー>すなわち<娘>については、<マルクト>すなわち<王国>に当たり、『これまで述べてきた諸<セフィロト>の物質的<顕現>』であるとしているが、これは同時に<花嫁>とは何かという説明にもなっている。
さて、最初に触れた<セフィロト>に照応する小アルカナは<数札のみ>だが、上の<四界>に配属される小アルカナは<全部>即ち、宮廷カードと呼ばれる人物クローズアップの絵札も含まれる。次はコイツの話である。
<宮廷カード>は各スートに4枚ずつ、ライダー=ウェイト版ではそれぞれに<王(KING)><女王(QUEEN)><騎士(KNIGHT)><従者(PAGE)>の名称が与えられているが、これらは例の4文字言葉とつながりがあるとされる。即ち、
<王>のカードは父たる<ヨッド>の象徴で<コクマー>に属し、
<女王>のカードは母たる<ヘー>の象徴で<ビナー>に属し、
<騎士>のカードは息子たる<ヴァーウ>の象徴で<ティファレト>に属し、
<従者>のカードは娘たる<ヘー>の象徴で<マルクト>に属する。
以上が基本的な照応・・・だったのであるが・・・エイカドは<これまで長きに渡って見られた混乱>を整理して見せる。著者の主張するところによると、<王>は<父>即ち男性の生殖力を表すカードであるから、本当は、勢いと精力をもって素早く前進する<騎馬像>こそがふさわしい。また、馬が曳く戦車に座している<王>は、実際には<王子>=息子たる<ヴァーウ>である。また、<従者>は<王女>=娘たる<ヘー>である。つまり、
<王(ライダー=ウェイト版の騎士)>のカードは父たる<ヨッド>の象徴で<コクマー>に属し、
<女王>のカードは母たる<ヘー>の象徴で<ビナー>に属し、
<王子(ライダー=ウェイト版の王)>のカードは息子たる<ヴァーウ>の象徴で<ティファレト>に属し、
<王女(ライダー=ウェイト版の従者)>のカードは娘たる<ヘー>の象徴で<マルクト>に属する。
ということ。何のことはない、後年の『トートタロット』とそっくり同じ構成だが、筆者は、これによってテトラグラマトンとの照応関係は随分しっくりいくように感じる。
もう一つややこしい、正確に言うと一見ややこしいのは、4つのスートに分かれる<小アルカナ>の<宮廷札>が特に<元素>と関連する一方、前述<異なる平面>の(1)の分類を使用する場合は「四界」とも照応する点。さらに、『この<宮廷札>に関して我々はまた非常に完全な<副元素の属性>をも手中にしている』-P80- という点である。
副元素の属性? 同じものをしつこく繰り返しお見せするようで恐縮ではあるが、要するに、
<王(騎士)>=<ヨッド>=<火>
<女王>=<ヘー>=<水>
<王子(王)>=<ヴァーウ>=<風>
<王女(従者)>=<ヘー>=<地>
ということを言っている訳で、ふたつを組み合わせると次のような見方が可能になる。
<棒の王(騎士)>=<火の火>
<聖杯の王(騎士)>=<水の火>
<剣の王(騎士)>=<風の火>
<星形の王(騎士)>=<地の火>
超広角で全体を捉える、マクロで迫る・・・。目的に応じていろんなレンズを組み合わせながらズーム・イン/ズーム・アウトできる機能、即ち、好きな時に、好きな階層の好きな部分にフォーカスできるという樹の多元的自在性は、どうやらこのへんに由来するようである。